育毛剤の有効成分として有名なグリチルリチン酸ジカリウム。他にも化粧水や乳液、のど飴などさまざまな生活のシーンで使われている成分です。

今回はグリチルリチン酸ジカリウムの育毛効果と副作用について調べてみました。

グリチルリチン酸ジカリウムって何?育毛効果は?

グリチルリチン酸ジカリウムとは、マメ科の甘草(カンゾウ)という植物から抽出した「グリチルリチン酸」と「カリウム」を合わせた成分です。他にグリチルリチン酸2kとか、グリチルリチン酸ニカリウムとも呼ばれています。

グリチルリチン酸ジカリウムは、抗炎症作用や抗アレルギー作用、抗菌作用を持つため、化粧品はもちろん、医薬品などにも利用されています。

ちなみに、グリチルリチン酸ジカリウムを配合している育毛剤は「医薬部外品」の有効成分として表示することができます。

グリチルリチン酸を含むカンゾウは生薬のひとつ

甘草は生薬や漢方薬として古くから利用されてきた植物で、とても甘みが強いことが特徴です。どれほど甘いかと言うと、なんと砂糖の100倍以上。

それゆえ甘味料などにも使われていて、しょう油やみそ、清涼飲料水や乳製品などの食品類にも幅広く使われています。海外ではリコリスとも呼ばれていて、ハーブティーとしても親しまれています。

カンゾウは育てるのが難しい植物

グリチルリチン酸ジカリウムの原料となるカンゾウは中国や地中海沿岸などに自生しており、主に中国から輸入されています。

日本でも栽培はされていますが、甘草を育てる気候には向いていないため大量に生産するのは難しいようです。しかも、種をまいてから収穫するまでの期間も長く最長で6年ほどかかることも・・・

そのため、甘草は需要のわりに国内での生産量が少なく、中国では輸出が規制されているため、将来的な供給が危ぶまれていました。

しかし最近になって、国内の工場で規定値のグリチルリチン酸を含む甘草の栽培が2年に短縮されたと発表がありました。技術革新もどんどん進んでいるのでひとまず安心ですね。
【参考元:http://www.yakuji.co.jp/entry54778.html

グリチルリチン酸ジカリウムの育毛効果

グリチルリチン酸ジカリウムを育毛剤に配合することで具体的にどのような育毛効果が得られるのでしょうか。

抗炎症・抗アレルギー作用としての育毛効果

グリチルリチン酸ジカリウムの抗炎症作用によって頭皮の炎症を抑える効果が期待できます。頭皮が炎症を起こす理由は、皮脂の過剰な分泌によるものや外側からの刺激によって起こるものなどさまざま。

普段から油の多い食事を続けていると、体内にたまっていく油を排出しようと皮脂として分泌されるようになります。とくに頭皮は皮脂腺の数が多いので、必然的にベタベタした状態になり、炎症も起こりやすくなります。

また、洗浄力の高いシャンプーや紫外線など外的な刺激を受けることで起こる炎症もあります。たとえば、自分に合わないシャンプーを使ったことによるアレルギーとしての炎症や、紫外線を受けたことによる炎症です。

そして炎症した頭皮はかゆみが発生するので、無意識に掻いてしまった結果、さらに炎症がひどくなることもあります。グリチルリチン酸ジカリウムは、これらの頭皮の炎症やアレルギー症状を緩和する働きをしてくれるのです。

抗菌作用としての育毛効果

グリチルリチン酸ジカリウムの抗菌作用によって頭皮を細菌から守る効果が期待できます。頭皮にはマラセチアやブドウ球菌、アクネ菌などの常在菌が存在していて、常在菌は、頭皮の皮脂や角化細胞などを食べながら生活しています。

そして雑菌やウイルス、紫外線などから頭皮を守る役割を担っています。ただ、あまりにも皮脂が多いと常在菌のエサも増えることになるので、結果的に大繁殖してしまうことがあります。このときに起こるのが脂漏性皮膚炎。

また、皮脂の分泌量が少ない乾燥した頭皮の場合は、皮脂によって守られるはずのバリア機能が衰えた状態になるので、外部からの雑菌による影響を受けやすくなってしまいます。

グリチルリチン酸ジカリウムは常在菌のコントロールをしながら、雑菌から頭皮を守ってくれる働きをしてくれるのです。

グリチルリチン酸ジカリウムの副作用

グリチルリチン酸ジカリウムを摂りすぎると「偽性アルドステロン症」を引き起こすことが分かっています。アルドステロンとは副腎皮質から分泌されるホルモンのひとつで、ナトリウムをため込む性質があります。
【参考元:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1019-4d9.pdf

そして、アルドステロンの分泌が過剰になることで、アルドステロン症を発症します。つまり、偽性アルドステロン症とは「アルドステロンが大量に分泌されているかのような症状」を引き起こすことだと言えます。

高ナトリウム血症と低カリウム血症が特徴で、主な症状としては、血圧上昇、むくみ、吐き気、倦怠感などが起こります。とくに高血圧の持病をもつ人は注意が必要です。

グリチルリチン酸ジカリウムは1日の摂取量を守ろう

偽性アルドステロン症は、グリチルリチン酸の1日あたりの摂取量が40mgを越えると発症しやすいと言われています。
【参考元:http://tourokuhanbaisha.com/?p=3734

たとえば、のどの炎症を鎮めるトローチにもグリチルリチン酸が使われていますが、A社のトローチ1粒には1.25mg、B社のトローチ1粒には2.5mgが含まれていました。
【参考元:http://www.ssp.co.jp/product/all/stnd/
http://www.meiji.co.jp/drug/gtroche/items/index.html

それぞれ1日あたりの摂取量の目安はどちらも最大で15mgなので、摂りすぎになる心配はありません。しかしグリチルリチン酸は薬以外でもさまざまな食品に使われているので、それも踏まえて注意しておく必要がありそうです。

ちなみに、この上限は服用したときのみで、育毛剤などの化粧品として配合する場合は100g中0.5gまでと決められています。そのため、外側からつける分には問題ありません。
【参考元:http://www.cosmetic-info.jp/jcln/detail.php?id=732

甘草には男性ホルモンを抑える作用がある!

実は、グリチルリチン酸の原料となる甘草には男性ホルモンを抑える作用があるそうです。

男性ホルモンと言えば、思い浮かぶのがDHT(ジヒドロテストステロン)ですよね。それなら甘草を体内に取り入れることで、DHTの増殖が抑えられるのではないでしょうか。

AGA(男性型脱毛症)の原因DHT

なぜDHT(ジヒドロテストステロン)を抑えないといけないかと言うと、AGA(男性型脱毛症)の原因だからです。抜け毛が起こる仕組みを見てみましょう。

まず、男性ホルモンが5αリダクターゼという酵素と結びつき、DHTという強力な男性ホルモンに変化します。このDHTが、頭皮にあるアンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)と結びつくことで脱毛因子を発生させてしまうのです。

脱毛因子とは「髪の毛を抜け」という指令のことです。つまり、DHTの発生を抑えれば脱毛因子が出すぎないわけです。

甘草は5αリダクターゼを阻害してくれる

甘草には5αリダクターゼを阻害する作用があります。つまり男性ホルモンと結びつく酵素を阻害することでDHTへ変化するのを防いでくれるというわけです。

【出典元:http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1404108882.pdf

でも漢方薬もある甘草を食べるのはなかなかハードルが高いです。いちばん簡単なのはハーブティーとして飲むことでしょうか。

リコリス(甘草)が含まれるハーブティーを飲むことで、男性ホルモンのバランスを保ってくれるかもしれません。

実際に、男性が1日当たり7gのリコリスを一週間の間摂り続けたところ、血中のテストステロン値が下がったと確認されています。

ただ、先ほどもお伝えしたように、大量摂取すると副作用の危険性も高まります。あくまでハーブを楽しむ範囲で取り入れてください。

ちなみにハーブティーに使われるヨーロッパカンゾウにはおよそ4%のグリチルリチン酸が含まれているそうです。つまり1gの茶葉に40mgのグリチルリチン酸が含まれるという計算になります。
【参考元:http://miniken.com/knowledgeLicoriceRootB.htm

グリチルリチン酸ジカリウムの育毛効果まとめ

グリチルリチン酸ジカリウムは甘草(カンゾウ)から抽出した成分とカリウムの化合物だったのですね。そして、優れた抗炎症・抗アレルギー・抗菌作用をもち、私たちの生活の場で幅広く利用されていることが分かりました。

ただ、生薬や漢方薬などの薬として体の中に取り入れる場合は、偽性アルドステロン症という副作用に注意が必要です。それはトローチなどのOTC薬品や、ハーブティーでも同じでしょう。

とは言え、濃度が低い限り皮膚に直接つけるには問題なさそうです。普段何気なく使っている育毛剤の中にもグリチルリチン酸ジカリウムが配合されているかもしれませんよ。ぜひチェックしてみてくださいね。